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相続について、いつ頃から意識し始めますか?

相続について、いつ頃から意識し始めますか?
まだご両親ともに若く元気であれば、「相続」という言葉など頭の片隅にもないと思います。全く意識する必要もないのかもしれません。
たぶん、両親の身に何事かが起こらなければ、全く考えることがない言葉ないのかもしれません。

ただ、相続というものは必ず発生します。そして、手続きにはかなりの時間を要します。

相続について、少しは考えたことがあるという方と、全く考えたことのない方ですと、いざ相続が発生した時のスピード感がまるで違ってきます。

相続についての知識を身につけておいて、損になることはありません。むしろ得になるほうが多いです。それも早く知れば知るほど有利になります。
今は必要なくても、何年か後に、「あれ、そういえば昔、相続についての本を読んだことがあるなあ。あれって、どんなのだったっけ」と思い出して、それからまた相続について調べていると、
「ああ、そうだそうだ、これかあ」というような感じで、昔の記憶が出てきて理解がスムーズに進むことがあります。

もしご両親の身に何かが起きた時、例えば病気になって入院した時などは、そのことだけで不安や多忙になり、他のことについては関心が薄くなってしまうと思います。ましてやそんな時に「相続」ということなど、「縁起でもない」となって全く気にもかけない状態になってしまうのではないのでしょうか。

そして、いざ相続が発生してしまったら、
「相続って何をすればいいの?どうしたらいいの?何もわからない、どうしよう」
というようなことになってしまうもしれません。
そうならないために、ご両親が元気なうちに、少しでも相続について知っていれば、いざという時には慌てなくてすむかもしれません。ほんの少し知識があるだけでも、安心感が違ってくるのではないでしょうか。

相続発生直後は、死亡届の提出や葬儀の日程調整でものすごく忙しい日々が続きます。役所を回ったり葬儀担当者との連絡だったり、休む暇がないほど忙しくなります。
そして火葬・初七日が終わったあたりでようやく一息つける状況になるのではないでしょうか。その時に相続について何も知識がない場合ですと、そこからがスタートになってしまいます。

相続には期限が設定されています。相続発生後10か月以内に相続税の申告を行うことになります。
「なんだ、10か月もあるじゃないか」と思われるかもしれませんが、相続の手続きはものすごく時間がかかります。最初のうちは「10か月もある」と思っていても、だいたい「もう○か月しかない」というような状況になっていきます。それだけ時間がかかる手続きが多いのです。

 

相続は書類の収集に時間がかかります。

まず、相続人を確定する作業から開始します。
亡くなられた方の戸籍を生まれてから現在までのものすべてを取り寄せるのですが、これが時間がかかります。戸籍を全く移動していない方でも、出生時の戸籍、婚姻時に新たに編製された戸籍、直近の除籍された戸籍で計3通になります。戸籍を移動していたり、改製されたりしていると、もっと通数は増えていきます。

令和6年3月より戸籍証明書等の広域交付制度が始まり、最寄りの市区町村の窓口で被相続人の出生時からの戸籍が全て取得できるようになりました。
ただ、申請できる方が制限されています。
被相続人の戸籍を申請する場合、請求できる方は、
「被相続人の配偶者」「被相続人の父母等(直系尊属)」「被相続人の子、孫等(直系卑属)」に限定されています。

例えば、お兄さんがなくなって、弟が最寄りの役所の窓口で「兄の生まれた時からのすべての戸籍が欲しい」と言っても、請求することはできません。

また、ご主人の両親が亡くなった時に、ご主人の妻が最寄りの役所の窓口で「主人は仕事で来れないので、妻の私が代わりに来ました。主人の両親の生まれた時からのすべての戸籍をお願いします」と言っても、請求することはできません。

広域交付制度はとても便利な制度なのですが、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属が自ら直接窓口に出向いて申請する必要があります。代理人による申請もできません。

さらに、直近の戸籍謄本1通等、請求する通数が少なければその場で受け取ることも可能ですが、「生まれた時からのすべての戸籍謄本」となると時間がかかるので、後日の受け渡しになる場合が多いと思われます。受取の際にも本人確認がありますので、原則申請された方がまた窓口に出向く必要があります。
ですので、広域交付制度を利用しない場合には、従来通り、戸籍のある市区町村の窓口に直接出向いて請求するか、郵送での請求になります。

遠方に戸籍がある場合には、直接出向くのではなく郵送請求をすることになると思います。郵送請求でも、請求してから10日~2週間程度はかかりますと市区町村のホームページでは案内されています。
戸籍を移動していた場合、そこからさらに別の市区町村へ郵送請求するとなると、もっと時間がかかります。

 

元気なうちに、一度出生からの戸籍を収集してみる

相続は書類の収集にとても時間がかかります。

元気なうちは「相続」などという言葉は浮かんでこないのかも知れませんが、「自分を知る」という意味でも、出生時からの戸籍を収集してみてもよいのではないかと思います。

時間に余裕がある方ならご本人が直接最寄りの市区町村の窓口に出向いて「広域交付申請」を行ってみるのもよいと思いますし、平日は時間が取れないということであれば「郵送請求」でできます。
「自分の戸籍がどこにあるんだろう」ということを知っているだけでも、いざ相続が発生した時のスピード感はかなり違ってきます。

相続手続きでは、戸籍の束の代わりになる「法定相続情報一覧図」を法務局に申請することが多くなります。この「法定相続情報一覧図の写し」があれば、相続手続きの際に戸籍の束を持参しなくても、これ1枚だけで済むという書類です。
この申請時には当然ながら、被相続人の出生時からのすべての戸籍が必要となります。相続発生時点から戸籍収集をスタートすると、それだけで時間がかなり経過してしまいます。事前に戸籍収集をしていたとしたら、動きのない「除籍謄本」「改製原戸籍謄本」等はそのまま申請時に使用できますので、直近の戸籍だけ取得すればよくなりますので、大幅なスピードアップになります。

ですので、一度、出生時からの戸籍を取得してみることをおすすめします。

生まれてくるときはお母さんのお腹の中で10か月、亡くなられたときも、相続税納付期限まで10か月。どちらも10か月ですね。10か月はあっという間に過ぎて行ってしまいます。この10か月間、「10 month PLAN」としてすみやかに手続きを行い、気持ちよくお見送りをしてあげましょう。

 

 

横浜市内で相続手続中心の業務を行っている行政書士です。最寄駅は横浜市旭区の相鉄線二俣川駅です。新横浜経由で東急線との直通運転が始まり、とても便利になりました。

著者行政書士梅澤 貴
うめざわ行政書士事務所
(横浜市旭区)

銀行で21年間、中小企業(建設業)の経理部門で8年間の勤務後、相続手続を中心に出張相談を行う行政書士として活動中。
国鉄時代からの「乗り鉄」で、お客様訪問時にいろいろな電車に乗れることを楽しみに日々活動しています。
好きな電車は、新幹線500系とJR北海道785系です。

些細なことでも遠慮なくご相談ください